オルカンだけが投資でしょうか?
コモンズ投信・伊井哲朗社長と考えた、長期投資と社会のつながり

10月6日、theLetterで始めたライブ対談の第1回として、コモンズ投信の伊井哲朗社長をお迎えしました。タイトルは「オルカンだけが投資でしょうか?」。
最初に断っておくと、これはオルカンを否定する問いではありません。私は今でも、個人が長期の資産形成をするうえで、世界中の株式に低コストで分散投資するオルカンは有力な選択肢だと考えています。
ただ、投資にはそれとは違う関わり方もあります。企業を選び、その企業がどこへ向かおうとしているのかを知り、株主として対話しながら長く付き合う。投資を通じて企業や社会とのつながりを感じる。そうした投資には、インデックス投資とはまた違った意味があります。
そこで今回は、「インデックスか、アクティブか」という勝ち負けの話ではなく、伊井さんがコモンズ投信を通じて何を実現しようとしてきたのかを、じっくり伺いました。
山一證券の廃業から生まれた問題意識
伊井さんの原点には、山一證券の自主廃業があります。1997年、山一證券が自主廃業。その後も銀行、証券、保険会社の破綻や再編が相次ぎました。当時30代半ばだった伊井さんは、金融が本来果たすべき役割そのものについて強い危機感を抱いたといいます。
金融は、企業の価値創造を支え、個人の資産形成を支える、いわば社会の「血液」のような存在です。その大切な流れがうまく機能していないのではないか。同じような問題意識を持つ金融関係者との勉強会や交流のなかで、渋澤健さんらと出会い、「自分たちで運用会社をつくって状況を変えよう」という話へと発展していきます。
今でこそ「長期・積立・分散」は資産形成の基本として広く知られていますが、当時はまだその考え方が十分に浸透していませんでした。自分たちの哲学を、自分たちの言葉で投資家に伝えたい。そして、自分たちで運用し、自分たちで販売する。そこからコモンズ投信が生まれました。
代表的な「コモンズ 30 ファンド」は、30 年目線という長期的な視点で、約 30 社に厳選して投資するファンドです。30年は、親から子へ一世代が受け継がれるくらいの時間です。「世代を超えて輝き続ける会社に投資したい」という考えが、ファンドの設計そのものに込められています。
企業も「長く付き合ってくれる株主」を求めていた
興味深かったのは、長期投資は投資家のためだけにあるのではない、という話でした。企業の側もまた、長く付き合ってくれる株主を求めています。
コモンズ投信の創業前、伊井さんたちはソニーを退任したばかりの出井伸之さんを訪ねたそうです。世界を代表する企業だったソニーであれば、海外にも優れた機関投資家がたくさんいる。それでも出井さんは、日本にも会社のことをよく理解し、長期で応援してくれる株主が必要だという趣旨の話をされたといいます。