私がプルデンシャル生命の保険を契約した理由と、担当者の提案に抱いた不信感…商品力だけでは守れない顧客の信頼

20年ほど前、長生きに備えてプルデンシャル生命の終身年金を契約しました。しかし、後任の担当者からは、その給付を手放す一時金への変更を提案されました。金銭詐取とは異なる経験ですが、顧客が契約に求めた価値を理解し、守る姿勢も企業文化に関わります。今回の不祥事と自らの体験から、商品力だけでは守れない顧客の信頼と、契約を見直す際の判断軸を考えます。
代田秀雄 2026.10.15
誰でも

商品力と企業文化の落差

10月9日、金融庁はプルデンシャル生命に業務停止命令と業務改善命令を出しました。前日の8日には、同社が金銭不祥事などに関与した社員・元社員157人の処分を公表しています。全員について詐欺罪が認定されたという意味ではありませんが、金銭詐取を含む不正に関与した人がこれほど多数に及んだ事態は、重く受け止めなければなりません。

私自身も同社の契約者です。20年ほど前、長生きへの不安に応える商品の機能に魅力を感じて契約しました。それだけに今回の問題からは、会社の信用を利用した不正への驚きとともに、金融機関が顧客に提供する価値とは何かを考えさせられます。

消費者が購入しているのは、契約書に書かれた商品の仕組みだけではありません。契約時の提案や説明、その後の対応まで含めた商品とサービスです。せっかくよい商品をつくっても、販売や契約後の対応によって、その価値を損なうことがあります。

会社の信用を利用した金銭詐取

今回の問題を、単に「営業偏重」という言葉で片付けてはいけないと思います。「営業偏重」という言葉からは、保険の販売目標を達成するために、顧客に合わない商品を勧めたり、説明を誇張したりするといった話を連想しがちです。しかし、明らかになった行為は、その範囲に収まりません。

会社が1月に公表した資料には、同社の申込書類や社名入りの書面を使い、架空の金融商品への投資を持ちかけた事案が記載されています。この事案では4人、約5300万円の被害が公表されました。別の元社員は、社員持株制度の名称を使い、利益や元金の保証をうたって資金を受け取っています。会社自身が、これらを「金銭詐取」と説明しています。

さらに、テレビ朝日の報道によると、1月23日の会見で専務は、不正によって会社の売上や業績が上がった事例は確認しておらず、会社に入るお金ではなく、社員らが消費したと推測していると説明しました。ここで問題にしているのは、自社商品を売るための不適切な営業だけではなく、会社の信用を使って顧客のお金を私的に受け取ったことです。

保険の相談をしてきた担当者が、会社の名前が入った書面を示して説明する。顧客が正規の商品だと受け止めても、不思議ではありません。その信頼を利用して、存在しない取引にお金を払わせる。これは商品のリスクを説明しなかったという問題とは異なり、取引そのものを偽る行為です。

不正を許した組織と経営責任

会社自身の原因分析によれば、報酬制度が金銭的利益を重視する人材を引き付ける一方で、担当者と顧客との密接な関係に対する監督が十分ではありませんでした。また、成績や表彰実績のある社員は、顧客からの信頼も得ていると認識されやすく、発言力が大きくなっていたとしています。

この組み合わせを考えると、単に一部の悪い社員が紛れ込んだということ以上に、事態は深刻です。会社の信用を背負って顧客と深く接することができ、その活動に十分な監督が届かず、成績を上げれば指導もしにくくなる。顧客との信頼関係を自分の利益に変えようとする人間にとっても、利用しやすい組織になっていたのではないでしょうか。

金融庁は、本来は営業社員を管理・指導すべき営業管理職も、不祥事の行為者に多数含まれていたと指摘しています。歴代経営陣についても、改善の機会がありながら営業を優先して既存の仕組みを維持し、問題を長年放置したとしています。不正を行った本人だけでなく、それを止める側と、仕組みを変える側の責任が問われています。

営業成績は、顧客への誠実さを証明するものではありません。よく売る人を評価することと、その人が顧客に何をしているかを確認することは、別に行う必要があります。報酬制度を変えるだけでなく、成績にかかわらず不審な行為を調べ、顧客の訴えを受け止める仕組みが実際に働くかを示さなければなりません。

前社長の間原寛氏は2月1日に退任とともに退職しましたが、金融庁は今回、過去の取締役等を含む経営責任の明確化を求めています。経営を任せ続けることが適切でなければ退任は必要です。しかし、何を報告され、何を問題だと認識し、何を変えなかったのかは、会社を離れても説明すべきことです。後任に被害者対応や再建を任せることと、当時の経営者が責任を果たすことは同じではありません。

20年前に選んだ終身年金

私自身が受けた提案は、金銭詐取とは性質も深刻さも異なります。ただ、顧客を不正から守るという最低限の責任に加え、契約した商品の価値を長く届けることも金融機関の役割です。その点について、20年来の契約者として感じてきたことがあります。

私が同社の「リタイアメント・インカム」を契約したのは、20年ほど前です。低金利の時代に、生きている限り年金を受け取れる仕組みを、民間の保険会社と契約できることに大きな価値を感じました。当時、私が探した範囲では、同じように長生きへの備えとして契約したいと思える商品は、ほかに見当たりませんでした。

老後の資金準備では、何歳までのお金を用意すればよいかが分かりません。長生きすることは喜ばしいことですが、その間の生活費は必要です。自分の寿命より先に資産が尽きる可能性にどう備えるかは、個人にとって対応が難しい課題となります。私が備えたかったのは、この「ロンジェビティリスク」、長生きに伴う資金不足のリスクでした。

終身年金は、そのリスクの一部を保険会社に引き受けてもらう仕組みです。自分で寿命を予想して資金を取り崩すのではなく、生存中は契約に基づく収入が続きます。同社の現在の商品資料にも、生涯にわたって年金を受け取る仕組みが示されています。

私が評価したのは、単にお金を増やす機能ではありません。何歳まで生きるか分からなくても、生活を支える収入を確保できることでした。少なくとも、その機能を個人に提供する商品力が、同社にはあったと思います。

一時金への変更提案

ところが、契約後は担当者が何度も交代し、接点はほぼメールと郵便による報告だけになりました。最後に対面した担当者から受けたのは、終身年金ではなく、一時金で受け取らないかという提案でした。

一時金での受け取りを断ったのは、終身の給付がなくなるからです。長生きによって資金が不足するリスクの一部を手放せることに価値を感じて契約したのに、一時金に変更すれば、その後のお金を何歳まで持たせるかという問題を、再び自分で引き受けることになります。

当時示された一時金額は、その時点の平均寿命まで受け取る年金を単純に合計した額にも届きませんでした。ただし、受取時期の違いなどがあるため、その比較だけで有利不利が決まるわけではありません。私が重視していたのは、受取総額を大きくすること以上に、生涯続く収入を確保することでした。

もちろん、一時金という選択肢を説明すること自体に問題があるわけではありません。同社の現在の商品資料にも、年金に代えて一括で受け取る方法が記載されています。まとまった資金が必要な人にとっては、一時金の方が暮らしに役立つ場合もあるでしょう。

提案の背景に、会社や担当者のどのような事情があったのかは分かりません。ただ、はっきりしているのは、その提案を受け入れれば、私が保険会社に移した長生きリスクの一部を、再び自分で負うことになるという点です。それがなぜ私の暮らしに役立つのか、当時の説明からは理解できませんでした。

契約目的を守る企業文化

この体験だけで、会社全体の対応を評価することはできません。しかし、既存契約者への提案が本人の目的に合っているかを、会社としてどのように確かめているのかは問いたいと思います。

私が感じたのは、担当者間の引き継ぎが十分でなかったというだけの問題ではありません。自社が販売した商品が、その顧客にどのような価値を提供したのかを、販売担当者が理解すべきだということです。契約している商品名や契約金額を知っていることと、顧客がなぜ契約したのかを理解していることは同じではありません。

同社は、生涯頼れるパートナーとして、契約後も保障内容が適切であり続けるよう顧客に寄り添うと掲げています。そうであれば、契約したときだけでなく、その保障が必要になるまで、会社として顧客の目的を理解し続けることが求められるはずです。

顧客の暮らしや希望が変われば、契約を見直す意味があります。しかし、何が変わったのかを確かめず、受取方法を変更できるというだけで提案するのであれば、顧客のための見直しとは言えません。終身年金を選んだ人にその機能を外す提案をするなら、失うものも含めて説明し、変更する方が本人の目的に合う理由を示す必要があります。

金融庁の「顧客本位の業務運営に関する原則」も、顧客の最善の利益を図る業務運営を企業文化として定着させることを求めています。顧客本位は、親切な言葉遣いや訪問回数だけで測るものではありません。

企業文化は、会社の利益を上げるための営業推進と顧客の利益との間に摩擦が生じたとき、何を優先し、どのように判断するかに表れます。成績のよい社員に不審な行動があれば、顧客保護を優先して調べられるか。契約を変えない方が顧客に適しているなら、そのまま持ち続けることを勧められるか。会社や担当者の利益と一致しない場面でも、顧客本位の姿勢を貫けるかが重要なのです。

消費者に必要な判断軸

私たち消費者も、契約の見直しを勧められたときには、そもそも何のために契約したのかに立ち戻りたいところです。新しく得られるものだけでなく、いま持っている契約から何が失われ、どのようなリスクを自分で引き受け直すことになるのかを確かめる必要があります。

終身年金であれば、一時金としていくら受け取れるかだけでなく、生涯続く給付がどうなるか。別の商品への乗換えであれば、新しい商品の利点だけでなく、いまの契約の保障や条件がどう変わるか。そのうえで、変更しない場合とも比べ、自分が求める安心につながる提案なのかを考えたいと思います。

ただし、これは、会社が果たすべき責任を顧客に移すという話ではありません。金銭詐取を見抜けなかった被害者を責めることも、契約に詳しくない顧客にすべての判断を委ねることも、適切ではありません。専門知識を持つ側には、顧客が理解して選べるよう説明し、その判断を支える責任があります。

私がプルデンシャル生命に期待して契約したのは、長生きへの不安に応える商品と、それを支える専門家のサービスでした。商品の仕組みに価値があっても、顧客が何を求めて契約したのかが理解されなければ、その価値は十分には届きません。

信用の回復には、被害に向き合い、過去の経営判断を説明し、不正を防ぐ仕組みを働かせることが欠かせません。そのうえで、すでに契約している顧客が何を守ろうとしているのかを理解し、必要な保障を長く届けることも重要です。商品をつくる力だけでなく、顧客がその商品に求めた価値を守り続ける姿勢があるか。そこまで含めて、金融機関の商品力と企業文化を見ていきたいと思います。

(JBpress【連載】オルカン思考の先へ 2026年10月14日)

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