人口減少時代の生存戦略「ブランド×ファンベース」で選ばれ続ける経営へ
第3回【共感の醸成】「物語」と「人」を主役にしたデジタル時代の広報術
広報は、宣伝ではなく 信頼を積み上げる活動である
前回は、スペック競争から抜け出すためには、自社のブランドの核を言葉にすることが重要であると述べました。ブランド・アイデンティティ、ブランド・パーソナリティ、ブランド・ライフヴィジョン。この3つの視点を整理することで、自社が顧客に何を約束し、どのような人柄で伝え、顧客の人生や暮らしのどこに寄り添うのかが見えやすくなります。
しかし、ブランドの核を言葉にしただけでは、顧客には届きません。その価値を、日々の接点の中で伝え続ける必要があります。店頭での会話、ホームページ、SNS、ニュースレター、イベント、商品説明、包装、アフターフォロー。その1つ1つが、顧客との関係をつくる場になります。
ここで大切なのは、広報を単なる宣伝と考えないことです。宣伝は、自社の商品やサービスを知ってもらうために必要です。しかし、売り込みだけが前面に出ると、顧客との距離はなかなか縮まりません。人口減少時代に必要なのは、一度買ってもらうことだけではなく、長く選ばれ続ける関係をつくることです。そのための広報は、短期的な販売促進ではなく、信頼を積み上げる活動であるべきです。
信頼は、都合のよい言葉だけでは生まれません。なぜこの商品をつくっているのか。なぜこの方法を選んでいるのか。どこに苦労があり、どこにこだわりがあるのか。そうした背景を丁寧に伝えることで、顧客は商品やサービスの奥にある姿勢を理解するようになります。
情報の透明性が、共感を生む
デジタル時代には、企業が自ら情報を発信する手段が増えました。大企業でなくても、ホームページやSNS を通じて、顧客に直接語りかけることができます。これは、地域企業にとって大きな機会です。広告費を大量に使わなくても、自社の考え方や現場の空気を伝えることができるからです。
ただし、発信すればよいというものではありません。大切なのは、何を、どのように伝えるかです。商品の特徴や価格だけでなく、その背景にある考え方を伝えること。完成した商品だけでなく、そこに至るまでの過程を伝えること。成功した話だけでなく、試行錯誤や工夫も含めて伝えること。こうした情報の透明性が、顧客の共感を生みます。
例えば、食品であれば、素材の産地や製法だけでなく、なぜその素材を選ぶのか、どのような生産者と関係を築いているのかを伝えることができます。旅館であれば、設備や料金だけでなく、どのような時間を過ごしてほしいのか、どのような思いでお客さまを迎えているのかを伝えることができます。製造業であれば、技術力だけでなく、品質を守るための地道な工夫や、現場で大切にしている姿勢を伝えることができます。
透明性とは、全てを細かく説明することではありません。顧客が「なるほど、だからこの会社はこうしているのか」と納得できるようにすることです。理由が見えると、商品やサービスは単なる選択肢ではなく、応援したくなる存在に変わっていきます。
専門用語ではなく、自分の言葉で語る
広報でよく起こるのは、専門用語が多くなりすぎることです。作り手にとっては当たり前の言葉でも、顧客にとってはわかりにくいことがあります。専門性はもちろん大切です。しかし、専門性をそのまま専門用語で伝えても、必ずしも価値は伝わりません。
例えば、ワインであれば、品種、土壌、醸造方法、熟成、酸、ミネラル感といった言葉があります。詳しい人には重要な情報です。しかし、初めてその商品に触れる人にとっては、それだけでは記憶に残りにくいかもしれません。